2018年02月19日

羽生選手の金メダルに想うこと

現在、冬季五輪が、韓国の平昌で開催されています。
連日、国を超えて、選手の躍動する姿に、胸を熱くしています。

先日、羽生結弦選手が右足の怪我にも拘らず、
大舞台への復帰戦で、金メダルを獲得しました。

羽生選手の生まれ持った才能はもちろんありますが、
そこから自分自身を高めるために積み上げて来られたのは、
羽生選手の努力あってのものです。
周りのサポートももちろん大切でしょうが、やるのは本人しかいないからです。

色々なことが、本人には降りかかったと思います。

右足の怪我への不安や、周囲からの重圧を乗り越え、本番で力を
出し切る精神力は、本当に心から尊敬の念を抱きます。


フリーの演技では、2015‐16シーズンに滑ったSEIMEIに再びチャレンジしました。

羽生選手がフリーの演技を滑り終えたあと、自分の右足に手を触れ、
リンクにも手を触れ、想いを込めていた姿をみて、以前、私がTV番組で見た話を思い出しました。

そのことを基に、参加している鍼の研修会で、朝の挨拶の時間があり、
お話させて頂いたことがあります。(2017年6月)

以下、長くなりますが、その抜粋を載せます。

私の場合、どうしても鍼灸のことにつなげてしまっているのですが、
ここで紹介している番組は、どなたも是非一度は御覧になって頂きたい内容のものでした。

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さて、話は変わって今度は
フィギュアスケートの羽生結弦選手のことです。

ショートプログラムとフリーを合計した男子シングル得点ランキング
のトップ10のうち現時点では4つを羽生選手の記録が占めるわけですが、
そのうち1位330.43と2位322.40は2015年の12月と11月に出した記録です。
(2017年6月時点)

ちょうどこの頃を境にして、トップに立つ選手たちは、4回転ジャンプを普通に跳び
300点台が当たり前になってきました。

そんな2015年のシーズンで、羽生選手は、狂言師の野村萬斎さんが2001年に主演した
映画、陰陽師(おんみょうじ)をフリーの演技の題材に選びました。
SEIMEIという曲ですが、和風のプログラムで、印象的な出だしの笛の音を聴けば、
皆さんなんとなく思い出されるはずです。

このシーズン前の2015年8月に、羽生選手は萬斎さんと対談をしました。
二人は表現者という点では一緒ですが、狂言という日本の伝統芸能の世界で
長くキャリアを築いてきた萬斎さんが、羽生選手の質問に答えるような展開です。

2015年の年末に「表現の極意を語る」というタイトルでTV放映されましたが、
その内容の中から少しご紹介したいと思います。

フィギュアの演技本番では、練習と違って観客がいるし、ジャッジが採点をしている。
その中でどう自分のペースに持っていくかという話題が出ました。

萬斎さんは、その場の雰囲気に対して挑戦的になるのでなく、
その場の空気を纏い(まとい)、味方につけると言っていました。
その場にあるもの全てに気をこめ、自分の力に変えられたら、良い表現ができるというのです。

フィギュアなら、お客、ジャッジだけでなく、彼らがいる観客席、リンク、フェンス、天井、壁など、
全てを意識し、気をおくることで、逆に皆の意識を自分に向けさせていき、自分が纏うことができる

言い換えるなら、場を支配し、味方につけることで、会場の空気感の中に自分が溶け込んで
演技することができる。その意識がない無の状態のときに良い表現ができることが多いというのです。

萬斎さんは、場を味方につけるための一つとして、
本番の前に観客席がどれ位埋まっているか、必ず意識しているそうです。

対談後のフィギュアの試合VTRでは、滑る前に、会場全体を見渡す羽生選手の姿がありました。
そしてこのシーズン、高得点を連発する結果に結びつきました。

鍼灸で治療する際にも、その場所の周囲を
良く把握し、場を味方にします。この世界の片隅に、自分の立ち位置を明確にすることで、
より安定した気持ちで治療に臨めるのではないかと
思うようになりました。

具体的な話をすると、まずは自分の四方に気を配ります。
萬斎さんの話では、狂言を演じるとき、舞台には四本の柱がありますが、
まずはそこにむけて気を込めていくとのことでした。
そこから客席や建物全体に意識を広げていくそうです。

治療に臨む際には、同じように、自分の東西南北を意識して、
自分がどこに立っているかを把握してから患者さんと相対するようにしました。
勝手知ったる自分の治療室でもあえて意識し、
出先での治療では特に明確に意識するようにしました。  


Posted by 鍼灸きさらぎ堂 at 11:21Comments(0)日記