2015年01月29日

安産灸について

安産灸について
どういうものか詳しく知りたいというお話しがありましたので、
書いてみたいと思います。

中国や日本の鍼灸医学古典に、お産にまつわる鍼灸治療のことが記述されていますが、
「安産の灸」「逆子の灸」という形で大きく取り上げたのは、産婦人科医の石野信安先生です。
戦後、長年の臨床経験より、日本東洋医学会にて三陰交のお灸で逆子をなおす治験を発表されました。

古来から三陰交は、足の三陰経(肝・脾・腎の三つの経絡)が交わるところで、
婦人病には効果があるが、妊婦には禁忌とされてきました。
石野先生は、はじめはお灸をすえて逆子をなおすということで、使っていましたが、
その後、母体と胎児に良い影響があることに気付かれ、
安産になり、生まれた子供が丈夫に育つことを臨床によって証明されました。
その後、様々なところで追試が繰り返され、現在に至っています。

三陰交への灸の効果は、血行循環促進、消化器系や泌尿器系調節、
子宮環境調節、ホルモンバランス調節、
冷え予防など多岐にわたります。
母親の体調が良ければ、赤ちゃんもスクスクと育ち、
出産がスムーズに済み、母体へのダメージも少なくて済みます。

具体的なやり方です。

三陰交のツボをとります。
妊婦さん向けの本などにも、このツボを温めると良いとよく紹介されていますが、
具体的には内踝の上三寸、脛骨(スネの骨)のきわにあります。
→内くるぶしの頂点を端として、示指~小指を4本そろえて置くと三寸の高さになります。
その辺りの骨のきわで、凹んで冷たかったり、押すと痛いところにとります。

お灸をすえる数は妊娠月齢とともに変化します。
いろいろな説があるかと思いますが、下に挙げるのは私の所属する会で推奨している壮数です。
(ここでいう壮数は、もぐさを小さくひねってすえる場合です。)

5、6か月…7壮(1日にすえる数)
7、8か月…14壮
9、10か月…21壮
予定日が近づいてきたら壮数を増やし、1日にできるだけたくさんすえる

私の妻のケースでいうと、
胎動がドンと、はっきり感じられるようになってからすえました(20週)
その後、上記のとおりにすえ、
39週から、壮数を増やし、約30壮すえていました。
破水し、入院してからは、病院の理解もあり、約70壮すえました。

注意点を挙げます。

①胎動を感じてからおこなう
三陰交のツボは、古来妊婦には禁忌とされてきたのは、
子宮への働きかけが強いあまり、妊娠初期に刺激をすると、
流産につながる恐れがあるからだと思われます。
5か月を過ぎ安定期になり、はっきりと胎動を感じるようになってからおこないます。
胎児がしっかりしていれば、お灸をすることで母親の子宮へのめぐりもよくなり、
健やかに育まれることになります。

②母親の身体の状態を「頭寒足熱」の状態でキープすることが本質である
安産灸は、お灸をやりさえすれば安産になりそうという、
名前のインパクトがあります。
いくらお灸をすえていても、生活習慣に問題があれば、
母親の身体にトラブルが出て、それが胎児にも影響してきます。
お灸をやりさえすれば良いのではなく、母体の状態をいかに良くして、それをキープしていくか。
一言でいうと「頭寒足熱」を達成するかが大切で、そのためにお灸をしているのです。
普段から下半身のめぐりを良くするために、足を冷やさない、ウォーキングをするなど
意識的に取り組むことも必要です。

きさらぎ堂でも安産灸のアドバイスをしています。
定期的にすえる場合、自宅でしていただくことになるので、
その際には、せんねん灸などの台座灸を使用します。

「逆子の灸」もあるのですが、それはまたの機会に。  


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2015年01月24日

2月の休診日


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2月は日曜日・祝日を、お休みさせていただきます。
よろしくお願いいたします。   


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2015年01月21日

花粉症について②

前回の続きです。

花粉症に対して鍼灸のアプローチとしては、

1.花粉症の症状が出ている時期に行う対症療法的な治療

2.花粉症が発症していない時期に行う治療(主に夏や秋)
…根本的にアプローチする場合はこちらの治療が必要となります。

それぞれみていきます。

1.→東洋医学では、花粉症による目、鼻、喉の炎症症状を
上部の気の流れ(=経絡)が熱を持った状態と考えます。
その原因は2.で述べますが、花粉が飛んでいる時期は、
手足の陽明経という目や鼻を流れている経絡が
詰まっていることが多いです。そこが通じるようにツボを使い治療していきます。
上に溜まった熱を、下におろしたり、発散させることで取り除いていきます。


2.→症状が出ていないときに、治療をするとは変だな、と思うかもしれません。
ですが、根深い花粉症の患者さんは、症状が出ていない時期から治療をしていかないと、
必ずといって良いほど、毎年同じことの繰り返しになってきます。

1.で経絡が熱をもつと書きましたが、その原因の一つが、夏に身体に溜まる「熱」です。
人間は気候に合わせて、身体も変化させています。
大雑把に言うと、夏は暑い時期として、必然的に身体に陽気(熱)が蓄えられていきます。
(これが過剰になると熱中症などになります)
秋には余分な陽気を発散させ、冬はその陽気を消耗しないように養い、
春にその陽気を使い、活動的になっていきます。
(季節感のない生活に慣れた現代人はピンと来ないかもしれませんが、
熊など、冬眠する野生動物の暮らしを想像してみれば、理解出来ることと思います。)

夏に身体に溜めた陽気(熱)を、秋に身体を動かすなどして、余分な分をうまく発散出来れば
良いのですが、それが成されずに冬を迎えると、身体の奥に熱が潜むことになります。
これが春になり、陽気が発散される時期に、身体の奥に潜んでいた熱が表に出てくることで、
人体上部の熱症状になります。春に起きる炎症はこの影響がかなりあると言えます。

また夏の間に冷たいものを取りすぎて胃腸を冷やし、
その働きを低下させることで、身体の中に「湿」が溜まりやすくなります。
この湿がさばけずに古くなって、身体にとって有害なものになったのを「痰飲(たんいん)」と呼び、
これも花粉症のとき、しつこい涙や鼻水の原因となります。


1年を通してこのサイクルが改善されない限り、花粉症はなかなかよくなりません。

少し専門的な話になりましたが、
・秋の時期にいかに余分な熱を発散させ、熱がこもらない身体にしておくか
・夏からいかに胃腸を整え、余分な湿を溜めない身体にできるか
が大切になってきます。
これにより、根本的に症状が抑えられる見通しがたってくると言えます。

もちろん花粉症がはじまる今から治療することも無駄ではありません。
その都度スムーズに陽気が発散できるように方向性をつけ、
胃腸の状態を整えることで、
つらい症状を緩和することができます。

私の所属する漢方鍼医会では、現在運気論に基づいた治療
(1年の季節の循環を考慮した治療)を追及しております。
きさらぎ堂でも、
ここ1年ほど季節を考慮にいれた治療に取り組み、成果をあげています。


次回は花粉症の症状があるときに
注意した方が良いことについて、書いてみようと思います。  


Posted by 鍼灸きさらぎ堂 at 22:12Comments(0)疾患別

2015年01月20日

花粉症について①

1月も半ばを過ぎ、寒さが最も厳しくなるころとされる大寒を迎えました。
冬至で日の短さはピークを迎え、少しずつですが日が長くなってきています。
そして花粉症の方には、個人差はありますが、症状がそろそろ出始める時期となります。

今回はこの花粉症について、鍼灸がどうアプローチしていけるかを書いてみたいと思います。

まず、花粉症が現代医学ではどのように捉えられているかです。
春先に多いスギ花粉が喉や鼻などの粘膜にくっつくと、異物と判断した人体の免疫機構により
排除命令が出されます。
この時に出るヒスタミンなどの化学伝達物質が目、鼻、喉などに炎症を起こし
症状が出てきます。

ここで考えたいのは、原因物質としての花粉だけが問題となり、症状を引き起こすのかということです。

花粉を避けるために室内に居たり、雨が降って花粉の飛散が少ないと思われるときにも、
症状がでることがあります。
同じ花粉症でも時によって症状に軽重があり、個人差もかなりあります。
ここから考えられることは、花粉を受け取る人の身体にも問題があるということです。

鍼灸ができることとしては、花粉を受け取る人の身体の中の状態を改善してあげることです。
身体が花粉に過度の反応を示さないように、方向性をつけてあげます。

治療を受けることで、花粉症になってもまずは軽くて済むようにしていきます。
言葉にすると簡単ですが、実際には根深い問題があり、根気良く取り組まなければならないです。

次回に続きます。  


Posted by 鍼灸きさらぎ堂 at 22:47Comments(0)疾患別

2015年01月06日

お産について⑤

前回の続きです。

息子は今月1歳を迎えます。
つたい歩きをしながら、歩く練習をしています。
こたつの机によじ登ってみたり、なかなか目が離せないです。

お産を通して感じたことを書いてきましたが、
最終回として、出産時のことを思い出してみます。

妻は35歳以上の初産でした。
予定日を過ぎても生まれる気配がなく、
産道を柔らかくするために、安産灸として三陰交にたくさんのお灸を据えていました。
結局、予定日の2日後、
朝の5時前に自宅にて破水し、
病院へ行き、翌日の昼1時台に出産しました。

先に破水して入院し、丸一日を経過して、
翌日の朝、本格的な陣痛が来てから出産まで半日かかりました。

時間はかかりましたが、妻は出産時の出血も少なく済み、私としては安産だったと思います。

以前の私は、安産とは陣痛が始まってから、出産するまでの時間が
短くて済むことだと思っていました。
母親が陣痛に苦しむ時間が短いほど安産、というわけです。
しかし、お産を身近でみて、考え方が変わりました。

安産とは、
まずは母子ともに健康で出産できることでしょう。
そしてお産に伴う母体へのダメージは出来るだけ少ないことです。

時間が短くても、出血が多かったり、一気に出産することで、
裂傷がひどいものになっては、産後の肥立ちが悪く、安産とは言えないと思います。

戦前の産婆の腕の見せ所は、いかに母体の裂傷を少なくするかだと言われていたようです。
赤ん坊の体力があるなら、ゆっくり産道が拡がるように、時間を掛けてでも
出産をさせることもあったようです。
『家で病気を治した時代-昭和の家庭看護』より


今回私は陣痛室からずっと付き添い、出産にも立ち合いました。
夫の役割は、陣痛が来ている間、声をかけて励ましたり、
マッサージをしたり出来ることは限られていますが、
効果的だなと思ったことがあったのでご紹介します。

それは身体の冷たくなっているところを、手掌で温めてあげることです。
とくに下肢です。足先や内くるぶし周り、三陰交など触って冷たく感じるところを
温めてあげます。単純なことですが、これで陣痛のつらさが緩和されたと妻は言っています。
もちろん定期的にやってくる陣痛そのものは痛いものですが、
乗り越えられる痛みにかわってくれたと言います。
精神的な落ち着きももたらし、ゆっくり産道を柔らかくすることが出来たのではないかと思っています。

お産は最終的には母親と赤ん坊の頑張りにかかっているわけですが、
まわりの人間がサポートをすることで、できるだけ楽に出産をすることが出来ると思います。

今回私は夫として、鍼灸師として妊娠中からずっとお産に関わることができました。

「お産について②」の中で、
”いかにお腹を柔らかい状態にキープしておくか”ということを書きましたが、
妻の治療を通じて出産をサポートでき、
そして、すぐに薬に頼らずに、人間の持つ適応力を、
あるときは劇的に、またあるときはじわじわと引き出せる
鍼灸の可能性を改めて感じることができました。









  


Posted by 鍼灸きさらぎ堂 at 22:48Comments(0)疾患別

2015年01月01日

新年のごあいさつ

2015年になりました。

今年も皆様のお役に立てるように、精進してまいります。

きさらぎ堂は5日より開いております。

本年もよろしくお願いいたします。
  


Posted by 鍼灸きさらぎ堂 at 22:06Comments(0)ごあいさつ